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WITH MY CHINA TOWN
鎌倉市観光協会で6年勤務してました
ー鎌倉市観光協会の専務理事もされていたとお聞きしましたが、どのくらいの期間されていたんでしょうか?
遠藤:6年間です。一昨年の6月までやってました。任期は2年で、6年間勤めました。
ー鎌倉市観光協会ではどういった役職でしたか?
遠藤:専務理事です。
ー主なお仕事というのはどういう内容でしたでしょうか?
遠藤:基本的な役割は事務局を仕切る立場ですね。あとは、観光協会というのは現実的には経済的に厳しいですから、地元の企業さんに観光協会への入会、また寄付や協賛などを募るような活動を主に担当していました。
ー遠藤さんは著名な方なので、PR活動などのお仕事も良く任されたりもありそうですけど、、、。
遠藤:鎌倉は僕が来る前から知名度のある地域ですので、僕がPR活動に直接絡むことは少なかったですね。
ー任期中に苦労された点はなんでしょうか?
遠藤:先程も言いました通り、鎌倉は知名度のある地域ですからお客さんも沢山訪れます。同時に鎌倉で新しく商売を始めたい方々も自然に多くなりますね。そういった方は、当然、鎌倉の観光資源を利用して商売される方ということで、「観光協会に協力してください」と、僕もお願いに周るわけですが、大体はお断りされてしまいます。
ーなかなかシビアなんですね。
遠藤:大体、僕の任期中は年間で20~30の事業者さんが新たに来られます。その内、ご協力いただける事業者さんは大体3%くらいでしょうか。長い間、協会の会員を続けてくれている方は、ずっと代々地元でご商売されてる方が中心です。そういう方は続けてくれてますが、新たに来られる方に新規に協会に入ってもらうことはなかなか難しいです。
ーそうなんですね。そのような課題を抱える中で、遠藤さんとして任期中にご自身で成果を感じられるようなエピソードはありますか?
遠藤:たまたま、JRの上役の方が、僕の現役時代に横浜大洋ホエールズのファンということで、大変ご好意にしていただいていた方がおりました。その関係から吉永小百合さんが出演するJRのシニア旅行企画のCMの撮影のお話いただきまして、鎌倉でやっていただいたということがありました。実際、どれだけお客さんが増えたかは分かりませんが、一定の反響があったと思います。
ー観光面で横浜中華街に対して何か思うところやアドバイスなどあればお願いします。
遠藤:アドバイスなんて出来ませんけどね(笑)。
ただ、自分も現役時代にそうでしたけど、横浜中華街と言えば高級というイメージがありました。現代の若年層の方にも同じようイメージがあるんじゃないでしょうか? もちろん実際は色んな価格帯のお店があるわけですが、「フカヒレ」がとか「アワビ」がとか、そういうイメージがどうしてもメディアを通じて入ってくると、「中華料理は(横浜中華街は)高いもんだ」と、先入観を持ってしまうんじゃないですか。そうすると、通りを歩いていてお店に入ろうと思っても、価格の先入観から「今日は豚まんで我慢しようかな」とか、思ってしまうというのはあると思うんですね。
もちろん高級店は高級店として昔からずっと商売しているわけですし、味も、サービスも評価されてということだと思いますので、そこは問題ではないんですけどもね。
でも、路地の小さな大衆的な老舗のお店で、ここが美味しいよとか、あれが美味しいよとかは、現役時代もいっぱい耳にするわけです。ただ、当時もそういったお店でもなかなか入りにくさが僕にはありました。価格的なこと以外にも、何か敷居の高さは感じましたね。
僕の場合は、人に連れて行ってもらってお店の人とも顔見知りになって、やっと自分で行けるようになったんですけどね。
鎌倉も一緒ですが、観光客の方にとっては地元のお店は敷居が高いというイメージを持っているようです。ただ、鎌倉も観光のお客様が多いですから、お店は基本的には一見さんの顧客を相手にしてるわけです。当然、観光のお客様は、一般的には現地で馴染みのお店を作りませんし、覚えようともしないわけですよね。そういうお客様を相手に敷居の高さを感じさせてしまうのはあまり良いことでないかもしれませんね。各店にもそれぞれの事情があって難しい問題なんですけども。
ーもう少し詳しくお聞かせください。
遠藤:鎌倉では商店街などの空き家問題があります。そこを貸店舗として貸すわけですが家賃も結構高いんです。でも、観光地ということで集客もありますから、新規の事業者の方(地元の方ではない)で直ぐ埋まります。ただ、家賃が高いですから商品やサービスも当然高めの設定になりますよね。でも、値段に対しての評価はあまり良くない場合が多いです。そうなると当然、一見さんは入りますが地元の方は行きませんよね。
一方、地元で代々商売されている方々は、地元のお客様も大事にするわけですが、そういうお店がメディアに多く取り上げられていてお客さんが並んでたりします。そうすると、同じく地元の方が行きにくくなります。
また、他方で、地元の方々が行きやすいお店ももちろんあるんですが、そういうお店も観光地の枠内で評価されてしまいます。いま、ネット社会での口コミとかの影響がスゴイじゃないですか。地元のお客さんを対象にやっていたお店も、そういう観光地の影響を受けて、次第に商売がしにくくなってしまう。
ということで、元々地元で商売されてる方にとっては、観光客のお客さんだけでなく、地元のお客さんを大事にするという使命感から、あるお店は観光客の方にとっては敷居が高いというか、入りにくさを感じさせてしまっているかもしれません。
ーなるほど、、。どちらにしても、地元のお客さんと観光客の方(一見さん)の来客のバランスのコントロールが難しいんですね。その問題から、元々地元で商売されている方々と新規の事業者さんとの間に、何かしらの方向性の不一致があって、地元中心の観光協会との連帯感が生まれにくいということですか。
遠藤:そうですね。そういう流れなんです。この問題は人気のある観光地には必ず起きている課題だと思います。
観光協会も会費を中心に市の補助なども活用しながら運営してます。そこで、「皆でお客さんを呼びましょうよ」と観光協会として新しい試みや企画を立てるわけですけど、元々地元で商売されている方は、地元のお客さんとの繋がりもありますから新しいことにはなかなか興味を持っていただけません。一方で、新しい試みには興味があるはずの新規の事業者さんは協会に参加いただいてないんで、、、。そういう、循環の悪さもあります。
どちらにしても、双方で、ほっといてもお客さんは来てくれるという想いが街全体にあるんですね。
ドラフトにかかる選手を育てたい!
ーでは、最後に今後の活動についてお聞かせください。
遠藤:現在、僕の活動の柱は3つです。中心の仕事は一般企業の営業職の会社員なんです。同時に小中学生向けの野球塾のインストラクターをしてます。もう一つは、今は少ないですがシーズン中の野球解説の仕事です。主には会社の仕事と野球塾のインストラクターの仕事が現在の中心ですね。
ーこれからのそれぞれの活動で目標などありますか?
遠藤:今は、それぞれ並行してますので、どうしても中途半端な状態になっていると自身では感じてます。ただ、仕事として、シーズン中は解説のためにできるだけ多く試合を見なくてはいけないですし、野球塾でも子どもたちに瞬間瞬間で真剣に取り組まなくてはいけない。
僕の中では、野球塾を10年以上続けていて、野球塾のOBから甲子園の選手やら社会人野球の選手には成長している選手が出てきてます。ただ、まだOBからドラフトにかかる選手はまだ出ていないので、そういう選手を輩出できるようにしなくちゃいけないという思いはずっとあります。ですので、選手育成の活動に今以上に力を入れたいと思ってます。
ー今日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。
遠藤:こちらこそありがとうございます。
撮影協力/一楽
取材コーディネイト/益田典彦
取材・文/坂本乾 撮影/伊藤司
Profile
遠藤一彦(えんどうかずひこ)
1955年4月19日(取材時:61歳)。福島県出身の元横浜大洋ホエールズの投手。1978年に入団以来、1992年10月7日に引退するまでの14年間、一貫して横浜大洋ホエールズに在籍しチームの主力投手として活躍。引退後は野球解説の後、横浜ベイスターズの投手コーチを勤める。2009年からは鎌倉市観光協会の専務理事就任し、2015年までの6年間で鎌倉市観光事業に携わる。現在もは、一般企業に務める傍ら、小中学生への野球インストラクターや野球解説者などの野球関連活動に尽力している。